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内部統制報告書の付記事項に記載すべき後発事象の検討方法

こんにちは、えみちーです!
もう6月!3月決算の会社はいよいよ初年度対応の大詰めの時期を迎えていますね。

まちゅんとダン子が次年度対応について書いてくれているので、
今日は、初年度対応の大詰めである内部統制報告書の付記事項に記載すべき後発事象の検討方法を取り上げます。

「後発事象」という言葉は、有価証券報告書にも登場しているため、聞き慣れない言葉ではないと思います。しかし、内部統制報告書に記載すべき後発事象は有価証券報告書に記載すべき後発事象と意味合いが異なります。有価証券報告書に記載すべき後発事象との違いを理解して、記載漏れがないようにしましょう

◆有価証券報告書の注記に記載すべき重要な後発事象
(連結財務諸表規則ガイドライン14の2、財務諸表等規則ガイドライン8の4)
【 定義 】
 連結決算日後、翌連結会計年度以降の財政状態及び経営成績に重要な影響を
 及ぼす事象

【 例 】
 (1)火災、出水等による重大な損害の発生
 (2)多額の増資又は減資及び多額の社債の発行又は繰上償還
 (3)会社の合併、重要な事業の譲渡又は譲受
 (4)重要な係争事件の発生又は解決
 (5)主要な取引先の倒産
 (6)株式併合及び株式分割


有価証券報告書に記載されている財務情報は、会計期間に発生した事象を集計したものなので、決算日後に発生した事象については開示する財務情報には反映されていません。しかし、次年度以降の財務状態及び経営成績に重要な影響を及ぼす事象は、投資家にとって、次年度以降の投資の重要な判断材料となるため、注記事項に記載することとされています。

◆内部統制報告の付記事項に記載すべき後発事象
(内部統制府令、金融庁「内部統制報告制度に関するQ&A」問83)
【 定義 】
 事業年度の末日後、内部統制報告書の提出日までに生じた、
 次年度以降の財務報告に係る内部統制の有効性の評価に重要な影響を及ぼす事象

【 例 】
 (1)会社の合併、買収
 (2)事業の譲渡、譲受
 (3)大幅な組織変更
 (4)基幹システムの全面更改


内部統制の有効性の評価基準日は期末日であるため、期末日後に発生した事象(すなわち後発事象)については、その期の評価対象に入りません。しかし、重要な後発事象については、投資家等の利害関係者への注意喚起の意味で、付記事項として記載します。

それでは、
「次年度以降の財務報告に係る内部統制の有効性の評価に重要な影響を及ぼす事象」
をどのように識別すればいいでしょうか?

この事象を識別するには、
「次年度以降の財務報告のリスクが変更となる事象」
が何かを考えると発見しやすくなります。

例えば、会社の合併、買収や事業の譲渡、譲受によって新たに評価すべき会社や
事業が増えたり、大幅な組織変更や基幹システムの全面更改によって業務プロセスを
大幅に変更することになります。

その結果、新たなリスクの設定や、既存のリスクの見直しが必要となります。
評価範囲がどのように変更されるか、それに伴ってチェックリストや3点セット等の
作成文書の何を変更または追加すればいいかをイメージするとわかりやすいです。

えみちーのプロジェクトでは、以下の手順で後発事象を検討し、検討結果を文書に残し、内部統制報告書の付記事項の証拠資料とする予定です。

◆内部統制報告書の付記事項に記載すべき後発事象の検討手順
(1)次年度以降の財務報告のリスクに重要な変更をもたらす可能性のある事象を
  洗い出す

 ・有価証券報告書の注記事項に記載すべき重要な後発事象のうち、該当する事象を
  抽出する
 ・上記以外で該当する事象(大幅な組織変更、基幹システムの全面更改等)を抽出する
(2)(1)で洗い出した事象について、次年度以降の財務報告のリスクに重要な
 変更をもたらすか否かを検証する

 ・評価範囲に変更があるか、3点セットに大幅な変更があるか等、評価手続きへの
  影響を検討する
(3)(2)の結果、(1)で洗い出した事象が内部統制報告書の付記事項に記載すべきか
 否かを結論づける


以上のように、内部統制報告書の付記事項に記載すべき後発事象は、有価証券報告書の注記事項に記載すべき重要な後発事象と意味合いが異なりますが、全く別物ではありません。有価証券報告書の注記事項に記載すべき後発事象と重複する事象とそれ以外の事象を明確にし、検討漏れを防ぐことが大切です。

<参照先>
連結財務諸表規則ガイドライン
財務諸表等規則ガイドライン
内部統制府令
金融庁「内部統制報告制度に関するQ&A」(追加分)


それではまた、お会いしましょう!

by sox_change | 2009-06-02 14:03 | ・SOX法マメ知識

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